【読書】松井石根と南京事件の真実

松井石根南京事件の真実」 早坂隆 文春新書

松井石根の半生を丹念に辿ることにより、南京大虐殺とは東京裁判で捏造された虚構であることを明らかにした力作です。
 松井は陸軍きっての日中友好論者でした。彼の書き残したものには「亜細亜復興」という言葉が多く見られます。欧米列強に対抗するにはアジア地域の団結が必要であり、そのリーダは日本と支那が担うべきであるというのが彼の理念でした。蒋介石率いる国民党政府を支持する松井でしたが、第二次国共合作により、彼の期待は裏切られます。当時の国民党政府の首都は南京でした。支那の共産化を防ぐため、中支那方面軍司令官となった松井は南京を陥落させます。このとき彼が何よりも留意したこと、それは軍紀の粛正でした。
 戦後、東京裁判により松井は南京大虐殺の責任者として死刑となります。南京で何があったのか。著者は、生存する兵士の証言と膨大な一次資料・日記を精査し明らかにしていきます。

『すでに南京戦は、その実情から離れ、「日本の軍国主義」の残虐性を表す1つの記号として「暴走」していた。日本軍の南京占領は、「大虐殺」として中国の国際的喧伝に利用されたことはもちろん、無差別爆撃や原子爆弾で数十万人もの人々を虐殺したアメリカにとっても、格好のエクスキューズとなった』

『連合国軍側はこの法廷を「文明の裁き」と自称したが、イギリス、フランス、オランダはこの裁判と同時進行的に、日本軍撤退後の東南アジア諸国への「再侵略」を臆面もなく果たしている。ソ連日本兵捕虜たちをシベリアに拉致、抑留するという国際法違反の真っ最中であった。「現行犯」による欺瞞に満ちた裁判が、牽強付会なる態度に基づいて、日本のみを断罪したのである』

そして著者はこう断じます。
東京裁判とは矛盾と虚構の束に他ならない』

松井石根と南京事件の真実 (文春新書)

松井石根と南京事件の真実 (文春新書)